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March 20, 2015

赤いハサミ

23hajimeinomata032

ちょうどこの時期だったと思う。
日向は暖かいが、日陰に入ると風が冷たく感じられる頃。
小学校低学年だった僕は弟たちを連れて田植え前の田んぼに毎年出かけた。
目的はザリガニ取り。ザリガニ釣りではない。
僕たち兄弟は飽きもしないで大きくて立派なアメリカザリガニを探し歩いた。
近所のお兄さんに教えてもらったザリガニの取り方は、
ザリガニが掘った巣穴にシャツを捲った腕を突っ込んで捕まえる豪快なもの。
巣穴にどんな大きさのザリガニが潜んでいるかは、取り上げてみないとわからない。
その日もいつものように田んぼのあぜ道を歩いていると、大きな巣穴を見つけた。
僕らが近づいたのを察したのか、大きな赤いハサミがが巣穴の奥に素早く逃げ込むのを見逃さなかった。
いつもどおり、僕は地面にうつ伏せになり、なるべく穴の奥まで腕が入るような姿勢をとる。
弟たちは大物との格闘に息を飲んでいた。
少しづつ穴に手を入れる。かなり深い穴だ。
ヒジまで腕が入ったところで、穴が少し広くなった。
広くなった穴の中で指を泳がすと、指先にものすごい痛みが走った。
想像よりも強い力に驚いて、勢いよく穴から腕を引き抜く。
指には一本の赤いハサミがしっかりと食い込みぶら下がっていた。
今まで見たこともない大きなハサミだった。
穴に手を入れた時の緊張、挟まれた痛み、暖かい風。
そんなことを思い出した。


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