Merkmal
5年前に盲腸で入院した。
人生で初めての入院で、35歳の誕生日の1週間前だった。
仕事が忙しく、帰宅はほぼ毎日真夜中で
夜になるとフラフラで熱を測ると38度近かった。
朝まで具合が悪ければ病院へ、と思うのだが、
朝にはすっかり熱が下がっているというのが数ヶ月続いた。
入院した日の昼間、
親友と鎌倉の材木座海岸や長谷のあたりで写真を撮っていた。
日本カメラの月例で続けて入賞して、訳のわからない自信があった頃。
ただ、体調は相変わらず悪く、途中で寄ったラーメン屋のチャーシューが食べきれなかった。
とても申し訳なかったのだが、汁の中に沈めて見えないようにした。
自分でも信じられなかった。
フラフラと帰宅後、熱を測ると39度近い。
これは完全におかしいと感じ、夜間救急診療へ。
レントゲン、血液検査では異常が見られなかった。
点滴をして休んでいたところ、
念のためCTをやろうという話になり、造影剤を注射されて検査機へ。
検査室を出ると先生の数が一気に5人に増えた。
盲腸で緊急に手術しなければ危険だと話をされる。
盲腸で危険というのはピンとこなかったし、その時はもう深夜の2時だった。
次の週末とか、明日とか、早くたってそんなものだろうし、
それまでに職場に連絡して休みを取らないといけないとか、
仕事をどう引き継ぐかだとか頭を過った。
ただ、よく話を聞いてみると、今から直ぐにだという。
瞬く間に準備が進み手術室へ。
早朝4時に始まった手術は朝7時までかかった。
当初、1時間程度と説明を受けていたが、
どうやら本当に危険だったようで、想定よりも時間がかかった。
摘出した盲腸は炎症して肥大していた。
通常の大きさの3倍近くに腫れていた。
放っておいたら間違いなく破裂していたとのこと。
その後、腹膜炎を発症し、
場合によっては死に至っていた可能性があったそうだ。
自分の身体を過信して何も考えずに過ごしていたが、
ちょっとした歪みに少し眼を凝らしてみたら、実は崖っぷちを歩いていた。
うまく言葉にできないけれど、
あの時の出来事は自分の人生に何某かの影響を与えている。
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