150425 術後2日目
午前4時に目が覚める。
昨日の朝よりか幾らか身体は楽だ。
麻酔の影響は昨日の夕方にはすっかり抜け、
身体の芯から出てくる悪寒は無くなった。
とはいえ、相変わらずの節々のダルさから推し量ると
熱は依然ぼちぼちありそうだ。
今日の回診でヒザ上からヒザ内部につなげられたドレーンパイプが外れる。
パイプは内径で5mm程度、外形で7mmというところ。
昨日の回診でも話があったので、それ以降自分でも気にしてみたが
どうもヒザの中の水分の出が悪いようだ。
自分ではどうにもできないけれど。
朝食はしっかり食べることができた。
熱はあるが、悪寒がないだけでも意識がしっかりするし、
何かを食べようという気にもなってくる。
食事の量は意外と多い。
間食をしようとしても買いに行けないので
ゆっくり噛んで味わって米を噛む。
残るは熱と痛み。
このふたつはしっかり付き合っていかなければならなそうだ。
前十字靭帯の再建手術は術後10日間、術後の足を地面に着けてはいけない。
それまでの間、完全に車イスでの生活になる。
特に右足のドレーンパイプが抜けるまでは、
ベットから車イス、車イスからベッドの移動は
看護師の介助が付かなければならない。
術後の激しい痛みを考えれば、足を着こうとは微塵も思わないけれども、
かなりの大きさの装具を痛みのある右足に
しっかり固定しなければならないのは
キズの痛みとは違う、それなりの痛みがヒザ周りに響く。
また、足を地面につけない姿勢というのは、想像以上に辛いものがある。
普段使っていない太もも周りの筋肉が悲鳴をあげた。
この入院で初めて車椅子用トイレを車イス利用者として使った。
トイレの利用も幾つかのステップがある。
ベッドから車イス、車イスの運転、車イスから便器への移動と
慣れていないのでそれだけでもかなりの労力と時間が必要だ。
それに加えて、片足を上げた姿勢を保たなければならないため、
補助用の手すりに文字通りしがみつかなければならなかった。
トイレに行って帰ってくるだけで、
痛みに耐えながらものすごい体力を使った。
ここ数年、完全に運動らしい運動はしていなかったので、
自分の体力のなさにほとほと呆れかえった。
担当医が回診に来た。
ヒザからのドレーンパイプを抜き取るとのことで、
その前にもう一度、
ヒザ周りを揉みこみヒザの内部の血を押し出した。
昨日のことがあったので、幾らか心の準備はできていたが痛いものは痛い。
それでも、やはりヒザ周りの血が出づらいようで、注射器を使うことになった。
担当医が取り出した注射器は長さ20cm、内径が3cmくらいだろうか。
針を袋から取り出し、注射器に接続したところで、視線を天井に移した。
右ヒザの外側、大腿骨と脛骨の隙間のあたりに鋭い痛みを感じる。
ヒザの中の水分らしきものが動いた。血液や水分を50cc抽出できた。
12年前のケガのときも、
注射器を使ってヒザの水を抜いたことがあった。
ものすごい痛い記憶があったが、
昨日の触診に比べれば、ヒザの注射は大したことはなかった。
痛みの記憶の序列が、自分の中で完全に順位を入れ替えた。
ヒザのドレーンパイプも麻酔なしでズルズル引き抜かれた。
これも、触診に比べたら大したことはなかった。
午後から機械を使ったヒザの曲げ伸ばしを始めた。
手術をした右足をベッドに寝たまま機械の上に乗せ、
スネから下を機械に固定する。
スイッチを押すとヒザの位置が少しずつ持ち上がり、
機械が「く」の字に曲がっていくという構造。
足の他の部分の筋肉を使わず、
ヒザを曲げることだけをトレーニングできる機械。
90度まで曲がらなければ退院できない。
2週間かけて少しずつ可動域を広げていく。
初日は40度の曲げを15分試した。
曲げること自体にはそれほど痛みはなかったので
次の15分は45度に挑戦。
これも痛みは殆どなかった。
トレーニングの最中、右ヒザを久しぶりにまじまじと見た。
本来ヒザは足の中で細くくびれた部分であるはずなのに、
風船のように赤黒く腫れ、足の中で一番太い。
元に戻るのだろうか。このヒザを見る限りはとても信じがたい。
夕方、家人が病院に顔を出してくれた。
昼間は伯母のお茶席の手伝いに出ていたので
顔を出してくれるとは思っていなかった。
遠回りになるから見舞いは時間のあるときだけでいいと
伝えたのだけれど、実際に来てくれると心強い。
今日の席は野点だったとのこと。
携帯で撮った写真を見せてもらうと新緑が綺麗な素晴らしい庭だ。
庭の木々に差し込む日の光を見ると天気もよさそうだ。
伯母から本の差し入れを頂いた。
辻原登の韃靼の馬というハードカバーの本。
ページ数だけみると600ページくらいか。
入院はまだまだ長いからじっくり味わって読みたい。
消灯前、左手の点滴針がジュクジュクと痛む。
明日で抗生物質の点滴が終わるので、また少し身軽になる。
本や雑誌を読みたいと思えてくるといい。