150428 術後5日目
起床時間の6時を過ぎても目が覚めず、
看護師の回診でようやく朝だと気がついた。
昨日手術を受けたYさんは術後1日目。
看護師とのやりとりが聞こえるがかなり辛そうだ。
ケガの手術だから時期に治るものとはいえ、
客観的に見てもかなり大変な手術だ。
術後、行動範囲が限られたせいか、いろいろな音が気になってしまう。
厚木基地を離着陸している米軍機の音が響く。
国道467号には何台ものトラックが通り、
バイクのけたたましい排気音が響いている。
飛行機のパイロットにも家族がいて、
食事を作って待っている家族がいることだろう。
トラックのドライバーも、勤めを終えたら家に帰り夕飯を食べるのだろうし、
バイクの若者も走り疲れれば家に帰って布団で寝ることだろう。
隣のベッドのTさんは友人と携帯で連絡を取っているようだ。
病室の静けさは、携帯のマナーモードの振動の微かな音も聞き取ることができる。
携帯の振動のたびに含み笑いが聞こえる。
笑うのはエネルギーがいることだ。相手からもらうエネルギー。
そして本人が笑える状態にいることを保つエネルギー。
きっとTさんの周りには素晴らしい仲間がいるのだろう。
Yさんにも手術直後にご家族が総出でお見舞いに来ていた。
手術直後の昨日の晩、職場から仕事の電話が入っていた。
電話に出て応対していたのが少し気の毒だった。
風が窓を叩きサッシの軋む音が病室に響く。
季節の変わり目の強い南風。
外はまだ晴れているが、にわか雨になるかもしれない。
廊下で車イス用のトイレのドアを開ける音。
しばらくして、トイレの洗浄音が遠くで響いている。
廊下にギッギッという車イスの車軸の音がし、
自分の病室の前を通り過ぎていった。
車イスに移り洗面所で歯を磨く。
歯を磨く音は意外と大きな音がする。
自宅で歯を磨いている時、もっと軽く磨いた方がいいんじゃないかと
家人にアドバイスされたのを思い出した。
昼前に急に頭が痛くなった。熱を測ると37度5分。
看護師に相談し、食後の薬が効かなければ
別の方法を考えようということになる。
頭痛のおかげで昼食は半分も食べれなかった。
鎮痛消炎剤と抗生物質を急いで飲み込む。
すこし仮眠をとったら回復した。
日課のシャワーもだいぶ慣れてきた。
ケガをした数ヶ月前、左足だけで着替えたり、風呂に入ったりした。
その手順を思い出し、さらに要領がよくなった気がする。
膝の曲げ伸ばしのトレーニングは、毎日すこしずつ角度を上げている。
午前は70度を30分。午後は75度を15分。
昨日、2回目の注射で右ヒザの水を抜いて少し楽になったとはいえ、
75度はかなり抵抗がある。
手術直後より腫れは引いたが、それでもまだ、左足に比べたら全く違う。
同じ人間の足には見えない。
退院までに90度曲がらなければならない。
残り15度。あと15度がかなり辛そうだ。
夕方の早い時間に日課が済んでしまい
ウトウトしていると16時過ぎに幼馴染の床屋の店長が顔を出してくれた。
病院から彼の家まではかなりあるのだけれど、それを厭わず来てくれた。
彼にも長期入院の経験があり、2週間強の入院の長さはどんなものか
何をして過ごしたかなど、先だって髪を切りに行った時、そんな話をした。
術後5日目、入院6日目になり、いくらか体調が落ち着いてきて
行動範囲、話す相手、見える景色などがかなり狭められたと認識した。
確かに不便だけれども、それ自体について、
退屈だとか、暇だとか、あまり感じることはない。
その環境の中で、どうにか楽しみを見つけようとしている。
思い出してみると小さい頃からそんな性格だったかもしれない。
ある意味、我慢強いのかもしれない。
ただ、彼が来てくれて、誰かが来てくれるというのは、
それだけでも十分に生活に刺激が出てくるし、
楽しいものだということに、改めて気がつかされた。
入院前、自分の車を実家近くのディーラーへ車検に出した。
車検から戻った車は実家に数日置かれていた。
実家の近くに住む別の友人がそれに気がつき、
あまりにも長く自分の車が実家に置いてあるので、
自分になにか良からぬことがあったんじゃないかと心配してくれたらしい。
ただ、事が深刻だと、いろいろ困る事もあるかもしれないからと
直接自分に聞く前に事情通の店長を訪ねに来たとのこと。
手術のことを隠すつもりもないけど、
わざわざ宣伝するほどもないというスタンスだった。
その友人に気を揉ませたのは申し訳なかったけれど、
どんな心境だったか想像するとちょっと面白い。
退院したらお詫びしないといけない。
家人は今日も残業だったようだ。
病院の消灯時間を過ぎてもしばらく起きていたが帰宅の連絡は入らなかった。
先に寝てしまうのは忍びないけれども、
膝の疼通と微熱でまだ体調が戻りきっていない。
明日は祝日だから、じっくり休んでくれたらいい。