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September 22, 2022

創作


西脇順三郎の詩「あむばるわりあ」のあとがき。
写真作品を創作する時、常々考えていたことが書かれていた。
原子爆弾ばかりが表現ではない。
わかりやすいものを作る必要はない。
ただ写真とことばに真摯でありたい。

《 西脇順三郎「あむばるわりあ」詩情(あとがき)より抜粋 》

詩の世界は創作の世界である。如何なる方法で創作するか。私の詩の世界は私の方法で作られてゐる。
各々の詩人は各々の仕事場をもつてゐる。多少なりともその秘密も持ってゐる。
私に私の仕事場を説明し開放してその秘密を知らせろといはれた。それで極く簡単に説明しませう。
先づこの詩集に出てくる詩の中で詩でないものもある。しかし詩にしようとして努力している点だけは見てもらひたい。
科学的哲学的考へ型は自然界人間界宇宙界にある物の存在の関係を何かしらの法則といふ組織の中で統一し整頓することである。
自然界宇宙界の構成は何かしらの要素が一定の関係のもとに結合された組織である。
この「一定の関係」は動かすことのできない関係であるが、科学者哲学者はこの関係の法則を発見するために、この関係を統一し整頓して考へるのである。
この動かすことのできない関係が少しでも破られた場合は自然界に重大変化が発生する。それは原子爆弾に応用される。
詩は人生を取り扱ってゐる。人生を材料にしている。

(中略)

即ち先に述べた、一定の関係のもとに定まれる経験の世界である人生の関係の組織を切断したり、位置を転換したり、また関係を構成してゐる要素の或るものを取去ったり、また新しい要素を加へることによりて、この経験の世界に一大変化を与へるのである。その時は人生の経験の世界が破壊されることになる。丁度原子爆弾の如く関係の組織が破壊される。
詩の方法はこの破壊力及至爆発力を利用するのである。
この爆発力をそのまま使用したときは人生の経験の世界はひどく破壊されてしまって、人生の破滅となる。
併し詩の方法としてはその爆発力を応用して即ちかすかに部分的にかすかに爆発を起こさせて、その力で華麗なる小さい水車をまはすのである。
この水車の力で経験の世界の関係が前述したやうに切断し転換されるのである。
要するに経験の世界にかすかに変化を起し、その世界にかすかな間隙が生まれる。
この間隙を通して我々は永遠の無量なる神秘的なる世界を一瞬なりとも感じうるのである。
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